最新情報|News

【山上コラム Vol.1】古民家は“壊す”ものではなく、“解く”ものです。

作成者: 山上浩明|Sep 15, 2026, 2:38:25 AM
古民家を解く。
 
日本のあちこちで、かつて暮らしを支えた古民家が静かに姿を消しています。
時代に置き去りにされ、朽ち果て、ただ廃材として処分される。
けれどそこには、人の営みの記憶と大地が育んだ素材の力が宿っています。
山翠舎は「古民家を解く」という眼差しで、その価値をほどき、未来へつなぐ道を探ります。
失われゆくものに抗い、眠る資源に光をあて、次代の文化と暮らしに活かしていく。
それが私たちの使命です。
こんにちは。代表の山上浩明です。
 
これまで山翠舎の公式サイトや会社案内、数々の取材などを通して、私たちの事業や取り組みについてお伝えしてまいりました。
 
しかし、私たちが日々どのような想いで古民家や古木に向き合い、どんな未来を目指しているのか。
その背景にあるストーリーや現場での哲学は、まだまだ十分にお伝えしきれていないと感じています。

そこで今回から、新たな発信のかたちとして、私の言葉で想いを綴るブログ連載「山上コラム」をスタートすることにしました。

記念すべき第1回は、私たちが掲げている「古民家を解く。」というミッションについて、お話しさせてください。

「古民家を解く。」というミッション


私は子どもの頃から、大工さんたちに囲まれて育ちました。
父方の祖父は建具職人、母方の祖父は材木店を営んでいて、自宅の前には木工所がある。そんな環境です。
 
それでも父から「継いでほしい」と言われたことは一度もありませんでしたし、私自身も継ぐつもりはありませんでした。
 
大学では理工学部に進み、卒業後はソフトバンクで法人営業をしていました。
営業成績で社長賞をいただいたこともあります。

転機になったのは、部署異動などの環境の変化がきっかけでした。
 
「このままでは、父の代でこの会社は萎んでしまうかもしれない。それはもったいない」。
そう感じたとき、幼い頃からお世話になった職人さんたちの顔が浮かびました。
 
2004年、28歳のときに山翠舎に入社しました。
実は、一度目も二度目も父に断られていて、三度目でようやく認めてもらえたんです。

入社してから私が向き合い続けてきたのは、「父を超えたい」という思いでした。
同じことをしていても仕方がない。
 
東京・赤坂のほうとう専門店「ほうとう天地」。古木をふんだんに使用し『明治以前の豪農屋敷』をコンセプトとした施工事例。
 
当時、私たちは古材を使った店舗づくりを手がけていましたが、業界の常識は海外から古材を仕入れること。
でも一方で、日本国内では古民家がどんどん解体され、価値ある木材が捨てられている。
 
この現実を目の当たりにして、「自分に何かできることがあるのではないか」と考えるようになりました。

そこから、解体される古民家の梁や柱を買い取り、「古木」と名付けてブランディングし、再生する事業を立ち上げました。
私たちが手がけた、古木を活かした店舗やオフィス、宿泊施設はこれまでに600件以上にのぼります。
 
今、日本には約900万戸の空き家があると言われています。
 
そこには暮らしの記憶が刻まれ、高い価値が眠っているのに、
調査の手間や工事費への懸念から、なかなか手がつけられていません。
 
だから私たちは、古民家を自分たちで買い取り、次の使い手へとつなぐ役割を引き受けることにしました。
 
▼歴史文化の残る長野県小諸市の街並み

私たちが大切にしているのは、「解体」と「解く」はまったく違うということです。
 
社内では、こんな言葉で説明しています。

「山翠舎にとっての解体は、古木を取り出すだけの作業ではない。
家が抱えてきた時間と、人の記憶を引き受ける入口である。
 
作業が始まってからも、一本ごとに寸法を記録し、出自をラベル化して保管する。
効率を優先すれば失われる情報を、次の活用のために残すのである。
 
解体とは、終わりではない。
 
次の使い手へ時間を渡すための、最初の責任である」


一本一本の柱や梁に、それがどこで、いつ、どんな暮らしを支えてきたかを記録してから、初めて手を動かす。
この地道な作業の積み重ねこそが、私たちの言う「解く」ということなんです。

古民家をただ解体してしまえば、そこにあった時間は数時間でゼロになってしまいます。
 
私たちのミッションは、「古民家を解く。」こと。
 
古民家の価値を、構造・素材・歴史にわけて丁寧に分解し、未来につないでいく。
まずは、これから20年で1万戸の古民家を解くというチャレンジに挑んでいきます。

過去の掲載記事もあわせてご覧ください。