閑静な住宅街の中にある、隠れ家的なお店。
このお店が認知されていくのが楽しみです。
昼はパッと出てきて、お昼休みの限られた時間でも美味しく食べることに時間を使えます。
夜は「あなたのための料理」を提供してくれるお店。
通って自分のための料理を提案してもらえたら、
何度でも行きたくなることでしょう。
入り口の古木のアーチやオリジナルの木製建具が目印です。
BIstro Coco 路地裏 オーナーシェフの小野宗隆(おの むねたか)さんにお店開店までの経緯をお伺いしました。
ーーお店をオープンされたのはいつですか?
2017年の9月です。
18歳から料理の世界に入って、20席前後のお店を中心に20店舗ほどをキッチンとホールで関わってきましたので、飲食業界歴は22年になります。
ーーお店を持つきっかけはどういったことですか?
「いつかは自分の店をもちたい」という思いは、多くの方と同じで飲食業界に入った18歳の頃からずっとありましたが、その「いつか」だけではズルズルといってしまうという不安もありました。
そのため、最後に勤めていた築地のお店で会社の寮に入りまして、お金を貯めよう、今やらないとできなくなるぞ、と覚悟を決めて五年ほど頑張りました。
ーー物件探しはどのように行いましたか?
家賃と地域と箱のサイズを自分の中で大まかに決め、あとはネットでひたすら探して観て、連絡する。でも、実際に行くと「無いですよ、決まっちゃいましたよ」の繰り返しで、なかなか良い物件には出会えませんでした。
実際のところ、居抜き物件かスケルトン物件になるのですが、居抜き物件はなかなか出てこなくて絶対数が少なかったですね。一方スケルトン物件ですと、ゼロから造作することになるのでどうしてもお金がかかってしまいます。
100万円/坪が目安と考えながら、でも、どうせやるなら自分でやりたい思いを入れ込んだお店を作りたい、という思いでした。
全部で30件以上は見たんじゃないでしょうか。今のお店があるエリアを中心に北参道・神宮前などですね。
ここの物件は、出していた不動産屋が少し遠かったため、来るのがめんどくさいと言われまして。何だよ、と少しムッとしたのは覚えています。最終的な契約自体はその不動産屋を通しましたけど、たまたま物件の二階に大家さんがお住まいだったこともあり、直談判をしたのが結果的に良かったのかもしれません。
ーー山翠舎との出会いを教えてください。
ネット検索です。
実は山翠舎とお話をしたのは三社目なんです。競合させたり相見積もりをとったりはしていないのですが、相場観はある程度わかっていたので、順次お話をさせていただいていました。
一社目は、物件見てもらって見積もり出してもらった後に、担当者から連絡があり「うちの会社倒産しました、、、」
契約前だったことも有り、私にとっては大事には至りませんでした。
二社目、出てきた見積が相場の倍の額。特別なことをお願いしたわけでもないのにそれではないよな、ということでそれ以上話を進めるのをやめました。
そして三社目にお話をしたのが山翠舎でした。
キーワードとして「古木・古材」で検索していたときに出会いました。
山翠舎の事例のページは隅から隅まで見続けましたね。多分、全ての写真を見たと思いますよ、それくらいずーっと見続けました。
壁紙やタイル、色1つ決めるのにも、「100種類あるなかから今決めてください」と言われたりしてしまうんですね。料理しかしてこなかった料理人としては正直戸惑うことも多かった部分もありました。
ただ、事例の写真をずーっと見ていると「あの店舗のあそこを取り入れたい」「あのお店のこんな感じで」と自然と打ち合わせのときに伝えることができるんです。山翠舎さんとしても自社の事例ですから、その時の工夫や、それをより良くする方法などをお持ちで、思ったイメージを伝えやすかったですし、スムーズに打ち合わせができたのではないでしょうか。
ーーお店のイメージはどういったコンセプトでしたか?
木の感じ、ぬくもりを出したいという点は決めていました。
例えば、松の柱が燻された感じ、鉋をかければきれいな白い色になるなど、そういった雰囲気をどう出せるかと考えていました。
店の表や店内もそうですが、曲がっている木の柱を使わせてもらいました。この曲がっている感じを見せることが出来たのは良かったです。
曲がっている木は、崖に生えて、ぐいっと空に向いて育ったもので、豪雪地帯でも耐えて育ったもだと聞いていましたので、その味わいがよいな、と。
恵比寿の山翠舎さんの会議室にある柱の感じが良かったので、それも含めてうまく設計の段階で伝えられましたね。
提案いただいた中でも、店の真ん中に走っている梁が良いですね。なだらかにカーブしている点、これが素敵でした。床材も、厚めの木材のフローリングを最初からお願いしました。
ーーご予算的なお話はどうでしたか?
一千万円近い見積の提示だったのですが、「ここはケチっちゃいけない」と心に決めていました。ずっとやっていくお店だから、そこはしっかりとちゃんとした内装をやってもらおう、と、強く覚悟を決めていたので、その点については大丈夫でした。
もちろん安くやろうと思えばいくらでも安くなって、内容的にも手を抜けばカスカスのお店でもできちゃうと思うんですが、それは嫌だ。と。最初にバシッとやろうと考えました。
ー設計図面と出来上がったお店、感想としてはどうでしたか?
思っていたイメージ通りのものが出来上がったと思っています。
実際に、来ていただいているお客様に一番見てもらえる、言ってもらえるのが「安心する」という言葉なんです。小さなお子様が遊びだしちゃう。そのような雰囲気を出せているのは嬉しいですね。
近くに保育園があるのですが、ママ友の口コミで人が人を呼んでといった流れができました。このお店はお子様が少し遊んでも大丈夫という雰囲気もできましたし、その循環が本当に嬉しいです。
近所の方に来てもらいたいと一番思っていたので、思っていたとおりになっています。
開店してから一年半ですが、当初想定したとおり、近くで働いている方と近所の方を中心にお客様の層にしても、イメージ通りにお店は進んでいます。
ーー改装追加したところはありますか?
改装したり、棚を追加したりといったことはありません。
今後、少しずつ追加改修はしたいので、そこはお願いする方向で相談しています。
ーー山翠舎に任せて良かったと思えたところはどこですか?
何回も、デザイナーや現場の方と多くの方と細かくやり取り打ち合わせができたことでしょうか。設計、小物や諸々を選ぶとき全部含めて、不安なところをしっかりと取り除いてお願いできたことです。
また、耳付きの分厚いカウンターテーブルも開店時に古木を利用した山翠舎オリジナルです。
自然な古木を使っていることで、夏と冬の気温差で割れが出てくるのですが、それもまた古木を使ったことによる味だと感じることができることも、お店が良くなっていっていると感じます。
ーーこれからお店を作ろうとしている方へのアドバイスなどありますか?
自分のお店の一番の魅力は、古木です。
木のぬくもりが一番の魅力だというお店を作りました。どのような木の種類があって、この木は何年経っていてというストーリーを伝えられる店作りをさせたら、山翠舎の右に出るものはないのではないでしょうか。
木を感じさせたいお店づくりをしたいという方は、信じて任せて良いと思います。
実際に使った古木の梁。古民家で使っていた木を改めて使ったときに感じることができる温かみは大事な点です。
例えば、お寺で何百年何千年も使ってる木からでるオーラほどではないものの、百年百五十年といった古木には近いストーリーがあるということ。
それを自分のお店として出せることが魅力でしたし、ここまでの良さを出せるのは山翠舎だからではないかと思っています。
結果的に山翠舎でつくれて本当に良かったですね。
(取材:赤藤央伸)